ネット上で誹謗中傷被害に遭った際の犯人特定のポイントについて
インターネット上で誹謗中傷の被害にあった場合、その記事を削除したり、犯人を突き止めて慰謝料請求をするためには、法的な知識はもちろんのことインターネットに関する基本的な仕組みや用語についても理解しておく必要があります。
そこで今回は、ネット誹謗中傷の被害にあった場合の発信者情報開示請求において必要となる、ネット関連の基礎知識についてわかりやすく解説したいと思います。
Contents
犯人を突き止めるためのポイント
例えばネット掲示板に誹謗中傷する書き込みをされた場合、その犯人を突き止めるためのポイントとなるのは、次の2点です。
IPアドレス
インターネットの世界における住所のような役割を担っている数字の羅列です。
例えば「195.81.154.1」などといったものがIPアドレスです。これによってどこに情報を送信するのかを管理しているのです。ただ、実際に私たちがインターネット上の住所として使っているのはIPアドレスではなく、ドメイン名が使われています。
数字の羅列は人にとっては扱いにくいため、扱いやすいドメイン名を用います。そしてドメイン名をIPアドレスに変換するのがサーバです。つまり、ドメイン名を用いて送信したメールがサーバを経由する時にIPアドレスに変換されて相手方に無事メールが送信できるのです。
プロバイダ
プロバイダとはインターネットに接続するサービスを提供している会社のことを言います。もっとわかりやすく言うと、インターネットの「入口」となるのがプロバイダです。ですから、いくらネット回線を繋いでも、プロバイダと契約をしなければインターネットの世界には入れないのです。
プロバイダには以下のようなものがあります。
- @nifty
- OCN
- BBexcite
- BIGLOBE
- plala
- So-net
なぜ犯人の特定のためにプロバイダが重要なのかは、後ほどご説明します。
これら2つの情報が、犯人特定への手がかりとなるのです。
プロバイダを突き止めるためにIPアドレスが必要
結論から言うと、犯人に関する情報を持っているのは「プロバイダ」です。
プロバイダは先ほども言ったように、インターネットの入口です。
誹謗中傷をした犯人も、必ずどこかのプロバイダを経由してインターネットを利用しています。そしてプロバイダを利用するためには、プロバイダと契約を結ぶため、プロバイダは犯人に関する氏名、住所、連絡先などを保有していることになります。ですから、犯人を特定するためにはプロバイダに対して発信者情報開示請求をする必要があります。
けれども、ネット掲示板に誹謗中傷する記事を書き込まれた場合、それを見ただけでは犯人がどのプロバイダを利用しているのかがわかりません。これはネット掲示板の管理者も同じです。
そこでポイントとなるのが「IPアドレス」です。
ネット掲示板やサイト管理者は、プロバイダはわからなくても相手のIPアドレスについてはわかります。そこで、まずは管理者に対してこのIPアドレスの開示請求を行います。IPアドレスがわかれば、そのIPアドレスをどのプロバイダが管理しているのかを調べることができます。これはインターネットで比較的簡単に検索して調べることができます。
これによって犯人が契約しているプロバイダが判明するため、そのプロバイダに対して再度発信者情報開示請求を行い、そこでようやく犯人を特定できる情報を入手できるのです。
その他の基礎知識
クライアント
インターネットの世界において、情報を受け取る側の私たちが使用するパソコンやスマホタブレット、携帯電話などを「クライアント」と言います。
サーバ
ネットワーク上の情報やサービスを、クライアントに提供するコンピュータのことを言います。
プロトコル
コンピュータの共通言語のようなもので、これによって様々な機種同士が通信を行うことができます。TCP/IPがこれに該当します。
ログ
コンピュータが保有している情報のことで、具体的にはユーザーの接続時刻、処理内容などが記録されたファイルのことを言います。ログを見ればコンピュータがどのような流れで動作しているかがわかるため、正常に作動しているのかなどを確認することができます。
また、アクセスログとは、ユーザーがソフトウェアやネットワークに接続した履歴のことを言います。ちなみにサーバのアクセスログを見れば、接続元のIPアドレスやいつ接続したのかなどもわかります。
まとめ
インターネットの世界では、書き込んだ相手方を特定することはとても難しいと言えます。ですが、サーバのアクセスログなどに犯人の残した痕跡がデータとして保存されますので、それらが消去される前に速やかに発信者情報開示請求をすれば、犯人を特定することも不可能ではありません。
ただし、誹謗中傷による発信者情報開示請求については、過去の事例を総合的に勘案すると、裁判所の仮処分命令がなければ応じないというプロバイダや管理者が多いように感じます。
そのため、もしも発信者情報開示請求をする場合は、早い段階で仮処分の申立てを行うことをお勧めします。