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ネット誹謗中傷被害に遭う前に知っておくべき「プロバイダ責任制限法」とは?

万が一ネット誹謗中傷の問題にあなたが巻き込まれた場合、それを解決するために重要となってくるのが「プロバイダ責任制限法」という法律です。

この法律は、ネット誹謗中傷の被害にあった時だけでなく、あなた自身が他人から誹謗中傷被害を主張された時にもとても重要となってきます。
では、プロバイダ責任制限法とは、具体的にどんな法律なのでしょうか?

Contents

プロバイダ責任制限法の概要とは?

プロバイダ責任制限法の概要
プロバイダ責任制限法が規定している内容は、大きく分けると次の2点になります。

ネット上の誹謗中傷などの権利侵害が発生した場合に、特定電気通信役務提供者(プロバイダ)の損害賠償責任を制限する

この法律のタイトルでもある「プロバイダ責任制限」ですが、なぜプロバイダの責任を制限する必要があると思いますか?

プロバイダは、ネット上で誹謗中傷などの権利侵害が発生した場合に、その被害を主張する被害者側と、表現の自由を主張する発信者側の板挟み状態となる立場に置かれています。

そのため、ネット上に投稿された情報を被害者の求めに応じて削除に応じれば、発信者側から責められることになりますし、反対に削除に応じなかったり発信者情報を開示しない場合は、被害者側から訴訟を起こされるリスクも負うこととなります。

プロバイダ責任制限法では、一定の要件のもと、投稿された情報を削除したり、発信者情報を開示した場合は、その責任を問われないと規定しているのです。つまり、プロバイダ責任制限法の目的の一つは、プロバイダの保護にあります。

ネット上の誹謗中傷などの権利侵害が発生した場合における、発信者情報の開示を請求する権利

皆さんにとって直接的に影響があるのが、この発信者情報の開示を請求する権利です。

プロバイダ責任制限法では、第4条において、発信者情報開示請求権を規定しており、次の要件に全て当てはまる場合について、発信者情報開示請求ができると規定しています。

発信者情報開示請求をするための要件

侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。

「権利が侵害されたことが明らかであるとき」とは、投稿されている情報を見て、それがあなたに対するものだと誰もが了知しえるものであり、かつ、その情報によって権利侵害を受けている場合ということになります。

よって、単に「ケンちゃんのバカやろう!」など、誰のことなのか他人が見て特定できないようなものについては、権利侵害に該当しません。反対に、あなたの氏名、住所、連絡先などの個人情報が投稿されている場合は、権利侵害が明白であると考えられるため、発信者情報開示請求の対象となります。

当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。

つまり、誹謗中傷する記事を書き込んだ加害者に対して、慰謝料などの損害賠償請求をする場合に発信者情報の開示請求の対象となります。

この2点について規定しています。ちなみに、プロバイダ責任制限法とは、たった4条のみの構成となっていますので、一般の方でも簡単に読むことが可能です。

プロバイダ責任制限法における「削除請求」の規定について

このようにプロバイダ責任制限法では、発信者情報の開示請求については、一定の要件に該当する被害者にはその請求権があると規定していますが、削除請求についてはこのような独立した条項はありません。
削除請求については、被害者の権利として直接的に規定しているのではなく、プロバイダの責任を制限するための規定として、次のように規定されています。

「権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない」

このように規定し、プロバイダが削除する要件として、次の2点が規定されています。

1:当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。

2:当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

そしてさらにプロバイダが削除をした場合に、その情報の発信者側から訴えられないように、次のような規定があります。

「当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない」

1:当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。

2:特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から7日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

つまり、プロバイダは発信者の情報を削除したとしても、これらの要件に該当していれば、プロバイダは発信者から「なんで勝手に削除したんだ」と責任を問われないと規定しているのです。

そのため、プロバイダはこれら2つの規定の間で、被害者と発信者それぞれから責任を問われないよう、削除請求に応じているのです。

プロバイダ責任制限法で開示される情報と必要書類とは?

プロバイダ責任制限法によって開示を受けられる発信者情報とは、具体的に次のような情報となります。

プロバイダ責任制限法によって開示が受けられる発信者情報

  1. 情報発信者の氏名、法人や団体の場合は名称
  2. 住所
  3. 連絡先メールアドレス
  4. IPアドレス
  5. 権利侵害をした情報が投稿された年月日及び時刻

なお、発信者情報開示請求を掲示板の管理者あてに行った場合は、これらの情報全てを把握しているわけではないため、開示されるのはIPアドレスとなります。このIPアドレスをもとにプロバイダを特定して、さらに発信者情報開示請求を行うことで、これらの情報の開示を受けられます。

ただ、プロバイダによっては、これらすべての情報を保有していない場合もあるようですので注意が必要です。

なお、必要書類としては、以下のようなものを準備しましょう。

プロバイダ責任制限法による権利行使に必要な書類など

  • 発信者情報開示請求書
  • 送信防止措置依頼書(いわゆる削除請求書になります)
  • 権利侵害があった投稿をプリントアウトした証拠
  • 該当サイトのURL
  • 発行3ヶ月以内の印鑑証明書(提出書類への捺印は実印となります)ちなみに、印鑑証明書は、自治体によってはコンビニでも取得が可能です。
  • 運転免許証など本人確認資料のコピー
  • これらをまとめてプロバイダに提出することで、プロバイダ責任制限法による開示請求や削除請求をすることができます。

    プロバイダ責任制限法による権利行使は、弁護士を代理人に立てた方が効果的

    このように発信者情報開示請求や送信防止措置依頼は、被害者本人でもすることが可能ですが、プロバイダも日々多くの依頼を受けているはずですから、被害者本人からの請求よりも、紛争化する可能性が高いと思われる弁護士からの請求の方がよりプレッシャーがかかるため、情報の削除や発信者情報の開示を受けられる可能性が高くなります。

    また、プロバイダとのやりとりも弁護士が代理人として対応してくれますのでとても安心です。そのため、プロバイダ責任制限法による権利行使は、できる限り弁護士に依頼して行うことをお勧めします。