ネット誹謗中傷、風評被害対策に強い弁護士の報酬はいくら?
ネット誹謗中傷や風評被害対策を弁護士に依頼した場合、その費用はどの程度かかるのでしょうか。これについては、さまざまなサイトで根拠の薄い情報が飛び交っていますが、本当のところはどうなのか、ここではネットでの調査を基に可能な限り具体的に解説してみたいと思います。
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弁護士報酬は原則自由!
そもそも弁護士報酬については、2004年4月1日から弁護士会としての弁護士報酬の基準はなくなっていますので、弁護士費用については原則として弁護士個人が自由に決めることができます。
ですから、以前よりも弁護士によって弁護士報酬の差が大きくなりつつあり、その相場を知ることはそんなに簡単ではありません。また、弁護士報酬と一言でいっても、実はその内訳や課金方法は弁護士によっても結構違ってきます。
ネット誹謗中傷にかかる弁護士費用の内訳
ネット誹謗中傷やその対策などを弁護士に依頼した場合、主に次のような弁護士報酬が必要となります。
相談料
相談料については、弁護士によって考え方が大きく異なります。ネット誹謗中傷対策における相談料の相場としては、概ね以下のような傾向です。
初回相談料無料 | 相談料一切無料 |
---|---|
30分5,000円 | 1時間又は時間制限なく1万円 |
概ねこのうちのどれかとなる可能性が高いでしょう。
ネット誹謗中傷にかかる弁護士の相談料のワンポイントアドバイス
相談料を有料としている弁護士は、事案の受任率が低いという傾向があります。
すなわち、相談だけされて受任に至らないケースが多いため、相談料を有料としているのです。反対に、相談料を無料としている弁護士の場合は相談者から信頼され依頼に結びつきやすい弁護士である可能性が高いため、そういった意味では比較的やり手の弁護士という見方もできるでしょう。
2:着手金
その名の通り、弁護士に事件を受任してもらう際に支払う費用のことをいいます。通常は、弁護士報酬全体のうちの何割かという形になります。
ネット誹謗中傷については、ネット上のさまざまなサイトや掲示板が事件の対象となるため、場合によっては管理者と連絡がつかず情報が削除できなかったり、発信者の特定に至らないようなことも稀に発生します。
そのような場合でも、弁護士としては一定の報酬がないと運営が成り立たないため、このような着手金というものがあります。
【着手金のワンポイントアドバイス】
ネット誹謗中傷については、被害者救済という意味合いが強いため、弁護士によっては着手金を「無料」としているケースも少なくありません。
特に、ネット誹謗中傷や風評被害による損害賠償請求に強い「サイバー弁護士」については、一般的な弁護士に比べ削除要請や発信者情報開示請求の成功率に自信があるため、着手金を無料にして「完全成功報酬」としているケースが多いようです。
ですので、ネット誹謗中傷対策などに強いサイバー弁護士を探すのであれば、「着手金無料」は一つの判断材料となるでしょう。
3:報酬金
これが弁護士費用の本体部分となります。ネット誹謗中傷については、その報酬の内訳が大きく3段階に分けられ、その解決手段には、事案によって次のようなパターンがあります。
誹謗中傷記事の削除請求
誹謗中傷記事を削除することに対して発生する報酬金は、どのような手段で削除ができたかによって報酬金額に差が出てきます。
裁判外の任意交渉によって削除できた場合
サイト管理者などへの内容証明郵便の送付程度で削除が完了すれば、報酬金の金額は低く抑えられます。金額としてはネット誹謗中傷を得意として謳っている法律事務所の金額を見ていくと、最低5万円程度からが相場のようです。
法的手続きによって削除できた場合
任意交渉での削除に応じてもらえなかった場合は、仮処分申請をして提訴するなどの手間のかかる法的措置を講じなければなりません。この場合は裁判外での削除の2倍に相当する10万円程度からが相場のようです。
情報発信者開示請求
誹謗中傷記事を投稿した犯人を特定する業務になります。これについても先ほどと同じく裁判外かそうでないかによって報酬金が異なります。
《参考》発信者情報開示請求書の書き方・弁護士に依頼するメリット
裁判外で加害者を特定できた場合
プロバイダへの書面の送付程度で加害者情報が入手できた場合は、報酬金も低く抑えられます。先ほどの削除請求と同じく概ね5万円程度が相場のようです。
訴訟による開示請求で加害者が特定できた場合
裁判まで起こして加害者情報をプロバイダなどから引き出そうとするとなると、非常に多くの手間と労力を費やさなければなりません。
そしてその分、弁護士への報酬金も高額になります。相場としては最低でも10万円以上はかかると考えておきましょう。
加害者への損害賠償請求
加害者が特定できたら、その相手に対して慰謝料を請求することができます。なお、ネット誹謗中傷による慰謝料は、その内容によっても相場が大きく変わってきます。
例えばリベンジポルノのような精神的ダメージが大きい事案の場合は、慰謝料が数十万円から100万円以上になることも少なくありません。
ただ、裁判外で加害者に慰謝料の支払いを了承させるためには、被害者側もある程度慰謝料の金額を譲歩せざるを得ないケースも出てきます。
ネット誹謗中傷による慰謝料請求は、裁判という法的手段に出た場合と、裁判外の示談で解決する場合とで、どちらの方が被害者にとって経済的利益が大きいのかを冷静かつ慎重に判断することが大切です。
なお、弁護士への報酬金の相場ですが、損害賠償請求の場合は、その手段に関係なく加害者から得られた慰謝料額の10~20%といういわゆる「成功報酬」の形をとっているケースが多いです。
そのパーセンテージについては、事前に弁護士に確認しておきましょう。
なお、訴訟になった場合は、この成功報酬以外にも別途裁判のための着手金が20万円程度必要となることを頭に入れておきましょう。
ワンポイントアドバイス
ちなみに、損害賠償請求を途中から弁護士に依頼したい場合、成功報酬の金額はどのように計算するのでしょうか。
例えば、自分自身ですでに交渉していて30万円まで加害者が支払いを了承していたとします。その時点から弁護士が代理人となってさらに交渉し、100万円の慰謝料の支払いの合意を取り付けた場合、成功報酬の計算の仕方としては100万円から当初の30万円を引いた70万円をベースに計算するのが一般的です。
このように依頼人が弁護士の介入によって得た利益のことを「経済的利益」といい、通常はこの経済的利益に対して成功報酬を計算します。
よく覚えておきましょう。
4:実費
最後に忘れてはならないのが実費です。
弁護士にネット誹謗中傷の解決を依頼すると、それにむけて次のような実費がかかります。実費については、先ほどまでの着手金や報酬金などには含まれていないため、別途依頼人が負担しなければなりません。
ネット誹謗中傷問題の解決にかかる主な費用について
郵送代
サイト管理者やプロバイダへの削除請求や開示請求は、内容証明郵便などで行うため、これをするのに切手代などの実費が必要となります。事案によって、郵送する回数などが変わってきますので一概には言えませんが、およそ1万円程度は最低でも予想しておきましょう。
ちなみに、内容証明郵便1通を送付する場合の料金は、通常の切手代に加えて、書留料金430円、配達証明料金310円、内容証明料430円が1回につきかかることとなります。何度も書面のやり取りを繰り返すと、それなりの金額となりますので予めよく覚えておきましょう。
交通費や出張費
遠方の弁護士に依頼した場合は、交通費や出張費、日当などを請求されることがあります。
ですので、あまり遠方の弁護士に依頼することはお勧めできませんが、近くにサイバー弁護士がいないような場合は、少し離れていてもサイバー弁護士に依頼することをおすすめします。
裁判費用
裁判を起こすとなると、訴状に貼る収入印紙や裁判所に支払う手数料などの実費が発生します。訴額などにもよりますが、概ね数万円程度です。
弁護士に報酬を払えば、実費は弁護士が出してくれると勘違いしている人が時々いますが、基本的に実費については依頼人に請求されますのでご注意下さい。
まとめ
ネット誹謗中傷や風評被害に対する弁護士費用は、対応する法律事務所によってもその価格が大きく変わってきます。ネットにあまり強くない弁護士の場合は、サイバー弁護士に比べ、事案の処理に時間がかかるため、その分報酬金などを高めに設定しているケースもあります。
逆に比較的低めの金額で受任してくれる弁護士は、事案解決までのスピードが早いサイバー弁護士である可能性が高いと言えるかもしれません。
もしもネット誹謗中傷について相談できる弁護士をお探しの際には、これらの弁護士費用に関する知識についてよく頭に入れて検討すると良いでしょう。